心が緩まる

年始に、山梨県の清泉寮にきた。やはり、都会の寒さとは質が違う。

けど、嫌な寒さではない。マスクを外せば、どことなく木の香りがする。木の葉を湿らせたような、山の空気のような。その匂いに、どこか懐かしさを覚える。

寒いのは苦手なはずだが、心地よく感じる寒さだ。日が照っているからだろうか。外気温を見れば冷蔵庫の中と同等の気温だが、肌に突き刺さる寒さではなく、包まれてる感じがする。

お昼に飲んだフルーツティーは、砂糖を使わず、果物の甘味だけでガトーショコラの甘さを越えてくる。山の中に入り込むと、五感が優位になる気がする。舌も喜んでるのが分かる。

耳に入ってくる音は、小鳥のさえずり。くちばしで木をつつく高い音。

雪が溶け、水になって滴る音。誰かが雪かきで硬い氷を削っているのも聞こえる。

山から降りてくる風は、空から聞こえてくるようだ。思わず空気を大きく吸い込んでみれば、薪が燃えている匂いも混ざっている。

そうやって五感を意識すると、どんどん自分が緩んでいく感じがする。この感覚は、温かい温泉に入った時のような。寒い日に熱燗を飲んだ時のような。

内側から、緩まる。頑なに絡まっていたものが、どんどん手放されていく。全身の筋肉が弛緩して、思わず顔が綻んでしまうようだ。

そうやって、自然に身を委ねると、やはり太古の時代から、自然とともに暮らしてきた本能が目覚めていく気がする。

こうやって思わず呼吸を深くしたくなる感覚が、ウェルビーイングなんだろう。心も体も、幸せな状態。

人と自然は、切っても切り離せない関係にあることを突きつけられる。

時に、災害という形で降りかかるものでもある。けど、身を委ねれば人を包んでくれることも多い。

心が緩まった時、人は人らしく生きられる気がする。

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